血の轍 最終巻を読んだ
私はずっと静一のことが可哀想だった。こんな親のもとに生まれてこなければ人並みの幸せな人生がおくれてたはずなのに、と。この親のせいで人生をめちゃくちゃにされたのだ、と。しかし最終巻を読んだら、静一にとっての幸せとは、別に人並みの人生をおくることではなかったのかもと思った。
静子を見送った後に描かれるのは、何が幸せかということすら考えていなさそうな、そんな事はどうでもいいという以前に、意識してもいないような静一の日常。ただ生きているだけ。そこに何の意味もなく、その意味のなさが逆に救いになっているような。そんな静一の人生。
ラストの静一は即身仏のようにも見える。あの丘の上から見える光景は涅槃のようだった。