雑文集

文章と漫画を描いています

女が「ダークナイト」にハマらない理由

 

「ジョーカー」が良すぎたので「ダークナイト」も見てみることにした。

 この作品は、男はドハマリ大絶賛、女はそれを冷ややかに眺める、というふうに、女と男で評価が全く分かれる作品として有名である。 

女に「ダークナイト」が理解できない理由を某評論家が YouTube で語っている動画を見たことがある。
それによると「女はリアリストだから SF を荒唐無稽なものだと切って捨てて、その良さを理解することができない」とのことだった。

私は10代の頃 SF ばかり読んでいたので、 SF マインドの有無が「ダークナイト」の評価を分けるのだとしたら私は絶賛派になるはずだなと思いつつ「ダークナイト」を見た。そして分かった。「ダークナイト」に男がハマって女がハマらない理由、それは SF マインド云々の問題ではない。男のナルシシズムをどこまで許容できるか問題である。

 この映画に出てくる登場人物は、ジョーカーを除いて、全員が主人公を引き立たせるための道具でしかない。特にライバル役の男なんかこれ以上ないほどの噛ませ犬っぷりである。全編主人公アゲに全振りしておいて、その上で主人公が「 自分は憎まれ役で構わない」 などと呟きつつ闇の中に去っていくわけよ。

 この男のナルシシズムに素直に酔えるか酔えないかで評価は分かれてくる。映画の出来が素晴らしければ素晴らしいほど、主人公アゲの陳腐さが鼻につくという寸法。

例えるなら、全身一分の隙もなく鍛え上げられた肉体に最上級のスーツを身にまとい完璧な立ち居振る舞いをしている男が口を開いたら歯を磨いていなくて息が臭かった、みたいな感じ。

いくら男が「あの筋肉凄いだろ!どれだけ筋トレしたかわかるか?あれだけの体を作るのがどんなに大変か女にはわかんねえだろ!」と言ったところで 「でも歯を磨いてないじゃん」で終わりなのだ。

筋トレする前にまず歯を磨けよ!
他のとこそんだけ頑張ってんのに、なんで一番基本的なとこが雑なの!?
まず最初に気をつけなきゃいけないとこはそこなんじゃないの!?

ダークナイト」を見るとそんな感想になるんだわ。
 つまり「ダークナイト」問題は、女に「ダークナイト」の良さが分からないのではなく、男に「ダークナイト」の駄目さが見えていない、もしくは見えていても気にならない問題なのである。
 某評論家にはそこんとこ(自分が男のナルシシズムにはゲロ甘だってこと)を自覚していただきたい。

最後に「ダークナイト」は、主人公をバットマンとして見るとトホホだが、ジョーカーとして見ると最高オブ最高であるということは書き記しておく。


十字式健康法

 

ある時期、原因不明の背部痛に悩まされていたことがあった。

最初はただの寝違いか何かだろうと思っていたのだが、何日経っても良くならない。数週間ほど経ってようやく「もしかしてこれ一生治らないヤツじゃ?」と不安になり始めた。

しかし病院には行きたくなかった。 どうせ変な検査をいっぱいやらされるだけで 「原因は 特定できません。 とりあえずこの治療を試してみましょう」とかなんとか言われて、適当な実験台にされるに決まっているのだ。

整体に行くか鍼灸に行くか迷っていたら 当時の上司にあたる人から十字式健康法を勧められた。 その人は十字式によってギックリ腰が完治したと言う。

「あの時は参ったよ。いきなり来ちゃったから。とにかく激痛で脂汗ダラダラよ。全然動けないの。電話のあるところまで這って移動してタクシー呼ぼうとしてたら、ちょうど家族が帰ってきてさ。そのまま抱きかかえられて十字式に連れて行かれたの。そしたらその場で治っちゃったんだよ」

そう言ってその人は一条ゆかりが書いた十字式健康法のチラシを見せてくれた。

キリスト教団体が行っている」
「念を使った施術 」
「肌に触れずに気の力で背骨をまっすぐにする」

私は、これを私に、よりによってこの私に勧める上司の勇気に心打たれた。

普通はこんなもの勧めはしない。 どんなに効き目があったからといって、勧めた瞬間に相手の心の中でシャーッとぶっとい線が引かれ「ハイハイ、アナタあっちの世界の住人ね」と距離を置かれかねない案件である。

そんな危険を冒してまで勧めてくれるということは、よほどその経験が劇的なものであったのだろう。

その人はギックリ腰のことがあって以来、定期的に十字式に通っているのだと言う。

「 何をやっても、どこに行っても治らなかった肩こりが、十字式に行くとすごく楽になるんだよ。ホント信じられないだろうけど」

ホント信じられなかった。 思い込みの激しい人間には効くかもしれんが、私のような疑り深い人間に効くとは思えない。
しかし私のモットーは「とりあえず一度は騙されてみる」である。

私は疑り深いがゆえに、疑り深い自分のことも疑っている。「疑っている自分が間違っているのではないか?」と。
なので、大きなリスクがないと思われることに関しては、割とアグレッシブに騙される方向でトライすることにしている。

今回のリスクは初回料金 3,500円をドブに捨てることくらい。直接体に触れないのだから、効かなかったとしても、悪化することもないだろう。

で、行ってみた結果なのだが、効果があったのか無かったのかと言うと、これがまた正直微妙なのだ。

施術を受けた直後は特に何も変化はなかった。その日の夜も「やっぱ背中が痛いままだなあ」と思いながら床につき 「やっぱ治ってないなあ」と思いながら翌朝の目覚めを迎えた。

が、気がついたらいつのまにか背中の痛みを意識しなくなっていた。施術を受けて数日経ってから「あれ?そういえば痛くないな。いつから痛くなくなったんだろう?」というくらい、本当にいつのまにか痛みが消えていた。

これが施術から24時間以内の出来事なら「効いた!」と思えるのだが、何しろ数日経っているので、もともと治りどきだったという可能性も否定できない。しかし、もし十字式に行ってなかったら、ずっと痛いままだったかもしれないのだ。

あ~、わからん。モヤモヤする。

もし、また背中が痛くなったら、もしくは肩こりにでも悩まされるようになったら、もう一度十字式に行こうと思いながら、背中も肩も痛くならないまま現在に至る。

noteやブログ、Twitter などで、原因不明の体の痛みや病気に悩まされている人を見かけることがある。 その中には「それ十字式で治るヤツなんちゃう?」と思われるものがいくつかある。

そういう記事を読むたびに十字式を勧めるコメントを書き込みたくて書き込みたくてムズムズしてしまう。 100パー、クソリプ扱いされるのがわかっているから我慢しているが、本当は声を限りに叫びたい。

「アンタいっぺん十字式に行ってみてんか!!!」と。


ほぼ日の「おおきいひきだしポーチ」を使ってみた

私が普段使っているポーチはホムセンで1500円くらいで買ったものである。

右のフタからはみ出ているマジックテープは私が自分で継ぎ足したもの。継ぎ足さないとフタが閉まらないのだ。

右のポケットにモバイルバッテリー、左のポケットに携帯電話を入れている。写真だとわかりづらいが、ポケットの向こう側にそれぞれもう一つずつフタ無しのポケットがあり、そっちには修正テープ、付箋、ボタン電池、絆創膏、ウエットティッシュを入れている。

ファスナーを開くとこんな感じ。

A5ノートと8インチのタブレットが入る。

しかし私はこの収納力では満足していなかった。これに加えてデジカメとデジカメの充電器も入るポーチが欲しいと常々思っていたのだ。

そんなある日、ほぼ日の「おおきいひきだしポーチ」のことを知った。この平仮名で商品名にするセンスが、いかにもほぼ日。私はこういうセンスが物凄く恥ずかしいと感じるタイプなので(自分のガラじゃないという意味ですよ)、ほぼ日からはなるべく遠ざかっていたのだが、その収納力を目の当たりにして、心が大きく動いた。

特に、この写真とか この写真なんか見た日にゃ「え?こんなに入るの?」ってことで、これは「買い」だとLOFTに足を運んだ。

実物を見ると、かなりスリム。マチも2センチ程度しかない。本当にこの中にあれだけのアイテムが入るのか?という疑問がわく。しかし、ほぼ日だもんな。糸井重里だもんな。トトロのお父さんがそんなインチキ広告するわけないよな。ってなフラグをビンビン立てつつ、ポーチを購入した。

さっそく、今まで使っていたポーチから中身を移し替える。

新たにデジカメも入れてみた。(右上のポケット)
他にもポケットは余っているが、そこに何かを入れてファスナーを閉じられる気がしない。この時点ですでにヤバい気配がする。

ファスナーを閉めてみた。

パンパンのモコモコである。

裏にもポケットがあるので、そっちにはタブレットを入れてみた。

キッツキツである。これ以上は何も入れられない。

いや~、騙されたね。あの写真、こんなに入りますの写真はあるけど、こんなに入れてもちゃんと閉まりますの写真はなかったもんな。

このポーチ、マチが5センチあったら、あの写真の通りの数が入ってただろうし、私も買ってよかったと思っていただろう。いいお値段だっただけに非常に残念。別の用途で使うしかない。

今回は人柱になりましたってことで。


さくらももこに騙された話

私は大きく騙されたことはないが、小さく騙されることはちょくちょくある。 いや、もしかしたら大きく騙されているにもかかわらず、自分で気が付いてないだけなのかもしれない。 騙されたと気づくのはそれが嘘だったとわかった時であり、わからないままだったら本人的には騙されてないのと同じだ。

 プラセボ効果もそういうものだと思う。科学的には何の効果もないなんちゃら水やらマイナスイオンやらでも、それが効くという思い込みによって病気が良くなるのなら、病人本人にとってはそれは本物だということになる。

 「100円ショップの食器は汚泥から作られている」とネットで読んだことがある。 嘘か本当か確かめようがないが、 それを読んで以来、食器を作る元となっている土の成分が気になるようになった。

 そんなある日、さくらももこが森修焼という陶器のブランドを強力プッシュしていることを知った。

 森修焼には高純度の天然石がブレンドされており、鉛やカドミウム等の有害物質を一切含まないと言う。 食器からは備長炭以上の遠赤外線が出ており、その効果はこのサイトを読めば一目瞭然。

うん、一目瞭然で胡散臭い。

 でもなー、さくらももこが大絶賛してるんだよなぁ。 料理の味がまろやかになるとかなんとかさぁ…

 私は半信半疑で食器を数点購入した。 料理の味に関しては特に変化はなかった。 ただこの食器、何故か汚れ落ちがいいのだ。 茶渋もほとんどつかない。 やっぱ何かイイんだろうな。 

森修焼の商品一覧に、食器ではない気になるアイテムがあった。
ブレーカーに貼っておくと 部屋の中の静電気がなくなり 森林浴と同じような効果があると言う。

使ってみたが全く効果はなかった。

このメーカー、静岡にあるんだよ。さくらももこも静岡出身。
ということは、さくらはサクラだったのか?

 この時から私の中でさくらももこの信用はほぼゼロになった。
 いや、彼女が飲尿療法にハマっていることを知っていながら、そんな人の勧めるものに飛びついた私がどうかしていた。

 その彼女が53歳の若さでお星さまになった。 森修焼も飲尿療法も健康には何の役にも立たないと体を張って証明してみせたわけだ。
 さくらももこに騙された一番の被害者がさくらももこ本人だったという皮肉な話。


2月の気になるニュース

www.afpbb.com

 

法則発動した

note時代からお読みくださっている方にしかわからない話で申し訳ないんだけれども、誰かに言いたくてしょうがない。

 

スイッチ入ったのは去年の8月。

法則は一年以内に発動するので、今年の8月までの間になんか来るだろうと思ってた。

 

昨日来たよ。

 

いやー、すごい。ほんと凄いね。

note時代からの相互さんになら言っても大丈夫だと思うので興味あったらTwitterの方にDMちょうだい(笑)

ライオンキングのフグリは揺れているか

ライオンキングのフグリは揺れていっるか
 

献血のポスターに巨乳のアニメキャラが使われている件でプチ炎上しているらしい。

否定派は、献血のポスターとしては不適切であると主張し、擁護派は、巨乳が不適切なら現実の巨乳の女はどうなんだ、現実の女に失礼だろ的な主張をしている。

「的な」と書いたのは、ザッと読んで私がそう解釈しただけだから。
擁護派の人から「そういう意味じゃねーよ」と思われるかもしれないので、一応保険をかけといた。

 現実に存在するものを描くか描かないか問題で私が真っ先に思い浮かべるのはCG版ライオンキングである。

本物のライオンと見分けがつかないくらい本物そっくりの雄ライオン。しかしフグリがない。本物のライオンの後ろ足の間にぶら下がっているあのフグリが CG のライオンキングにはないのである。 これはどう考えてもディズニーが不適切と判断して描かなかったに違いないのだ。

主人公のシンバが疾走するシーンでフグリが揺れていたら、おそらく観客の目はそちらに釘付けになってしまい、ストーリーの趣が削がれてしまう。その事を制作側は懸念したのだと思う。「ストーリーに何の関係もないのにわざわざフグリなんか見たくねーよ」というのがほとんどの観客に共通する思いだろう。

 そう考えると、日本のアニメで女キャラの乳がユサユサ揺れるのは、それを見たいと思う人間が少なからずいるからだ。 その人間の性別は圧倒的に男に偏っている。つまり男が見たいものは描かれ、見たくないものは描かれない。

さて献血のポスターに話を戻す。

 巨乳のキャラでも真っ正面から描けば胸の大きさはそれほど目立たないはずだ。だが、このポスターは胸のデカさを強調するポーズになっている。
何故か。
こういう絵を見たい人に向けて描かれたものだからだ。
こういう絵を見たい人とは誰か。
 まあ、男やろ、常識的に考えて。

 赤十字はどういう人に献血してもらいたいと思っているのか。
建前的には健康なすべての成人だろうが、このポスターのターゲットになっているのは男だ。男を釣るために巨乳を餌にしているわけだ。
このポスターが問題視されているのはまさにそこだ。

巨乳の女性には何の問題もない。
巨乳の女性をエサとして使っていることに問題がある。

この違いがわからないと何が適切で何が不適切なのかを理解するのは難しいと思う。

巨乳の女性に限らず、男だろうが動物だろうが、客寄せのエサとして使われる事例はいくらでもある。
男や動物であれば問題にならないことが女だと問題視されるのは何故か。
それはこの社会の中で女がどういう位置に置かれ、どういう風に消費されているのかという現実と切り離して考えることはできない。その部分の共通認識がないままで、あのポスターに賛成だの反対だの言ったところで、議論は永遠に噛み合わないままだろう。